重要文化財馬場家住宅の開館20周年を記念した特別展「馬場家住宅20年の歩み」が開催される運びとなり、地元議員としてオープニングセレモニーにお招きいただきました。馬場家住宅は、松本市の南部、内田地区のほぼ中央部に位置し、私の自宅からは車で5分程度、ウォーキングコース上にある身近な文化財であり、地元では馬場屋敷という呼称で親しまれています。
「内田の馬場屋敷が、松本市に寄贈されたらしい」と聞いたのは、バブル経済が崩壊した頃のことだったと記憶しています。私の子どもたちは明善小学校の卒業生ですが、馬場屋敷は、同小学校で行われる写生大会の格好の写生場所でした。「一角に馬場家のご当主様が住んでいるんだって。洗濯物が見えたよ」という土産話を興奮気味に伝えてくれたのが、娘であったか息子であったかは忘れてしまいましたが、ともかく子どもたちにとっては不思議な生活形態であったのでしょう。松本市まるごと博物館構想のもとで、博物館に姿を変え、開館20年を迎えた馬場家住宅。その前に立って、先祖伝来の屋敷を市に寄贈するという英断を下されたご当主様の生き様に、私は改めて思いを馳せたことでした。
オープニングセレモニーでは、内田地区に伝わる「ササラ踊り」が披露されました。寿台公民館長を務めていた頃、私は毎年8月15日に行われる「ササラ祭り」にお招きを受け、踊りの輪に加えていただいたものでした。ゆっくりと進んで下がる、ためらうような所作は、愛馬を送り出す時の悲しさを表現したものだそうで、松本市重要無形民俗文化財第1号に指定されていると、内田地区の方々は胸を張ります。馬場家住宅もササラ踊りも、松本市東南部の大切な宝です。
馬場家住宅の広大な敷地と豪壮な表門、本棟造りの主屋はよく拝見しておりますが、今回は特別に、普段は非公開とされている隠居屋に通していただき、文書蔵や茶室の外観を拝見することができました。これほどの屋敷や文化を維持していた豪農の財力や暮らし向きとは、どのような規模のものだったのでしょうか。
我が家の庭では、まだ朝顔が咲いています。寿台公民館長時代のインテリ館長補佐氏が、「朝顔は夏の花と思われがちですが、実は秋の花なのですよ」と語っていたことを思い出しました。彼は優秀な学芸員で、現在は松本市立博物館に勤務しています。